星界の紋章アニメ化記念大放談『抜錨!!』レポート
(於・第37回日本SF大会CAPRICON1)


 去る8月30日、名古屋で行われた第37回日本SF大会内の自主企画、"『星界の紋章』アニメ化記念大放談・抜錨!!"の模様をお届けします。

行われたのはSF大会2日目。早朝9時からの開始でしたが、三十分近く前から参加者が入り始め、開始時刻には会場の七割近くがうまる盛況で、改めて『星界』シリーズの人気を実感しました。

パネリストとして参加していただいたのは原作者として森岡浩之先生、キャラクター原案赤井孝美先生、サンライズの岩田幹宏プロデューサー、文芸の稲荷明彦さん、そして司会進行役に大森望先生という豪華な布陣。

森岡先生はこの企画のために6時起きという気合の入り様。大森先生はさすがに眠そうなご様子でしたが、2時間を通し、随所に笑いをはさみながらもしっかりと進行するあたりはさすがでした。

<アニメ化への道>

劈頭大森先生が『戦旗』の続刊について森岡先生に話を振り、森岡先生が口ごもるという微笑ましい(笑)光景の後、アニメ化の経緯へ。

今回のアニメ化に関して、『紋章』刊行直後から何社かの申し出があったそうで、そのうちからバンダイビジュアルを推したのは実は赤井先生。バンダイが請け負った時はサンライズが制作を行うとのことになっていたため、長年の経験から、資金的能力的にやれるのはここしかないとの判断で、積極的に森岡先生にプッシュしたようです。

<鎌倉の老人(謎)/フィクサー赤井>

赤井先生はただのキャラクター原案という以上に深くアニメ化に関わっていた(いる)様で、実はバンダイビジュアルに事前に『星界』を持ち込む、という暗躍もしていたそうですし、現在も演出等の相談をよくうけているとのこと。なんでも爆発シーンの制作にあたっては赤井先生のチェックが入るらしく、脚本の爆発指定に『赤井的爆発』などの文言が書かれているそうで、某中野フラッシュや矢島合成を思い起こさせます。

赤井先生が特撮監督をやっていたという昔のすねの傷はともかく、現在のメインはやはりキャラクター原案。赤井先生によるキャラ原案がOHPによって披露されていましたが、大森先生はスポールを見て曰く、「このスポールは僕のスポールと違いますね(笑)」。これに対し赤井先生は、「小説は頭のなかにそれぞれのキャラクター像を育んでいるものであり、それが絵描きにはプレッシャーとなる反面、それをいい意味で裏切るのがまた醍醐味である」、と語っていました。

今回のキャラクター設定にあたっては、赤井先生一人で描いているのではなく、ナインライブスの若手スタッフにそれぞれのキャラを描かせ、そのなかのポイントポイントを赤井先生が集約し絵にしているそうです。

<サンライズの愉快な仲間たち>

フィクサー赤井の決定により、バンダイ=サンライズに使命がくだり、話をを持ち込まれたのが岩田さん。当人曰く、「SFはSFでもスポーツフィクションなら強いんだけど」(当時『ガンバリスト瞬!』をやっていた)という岩田さんはエライ人から『紋章I』を手渡され、なんと読みにくいんだ、と言いつつもなんとか読了、「Iが読めた後はするするっと」(岩田さん)II、IIIを読破し、ほかのプロデューサー連が一人も読破出来なかったこともあり、コレやります、となった由。

そのあと稲荷さんがこれを読み、岩田さんから「(当時企画が上がっていた)DTエイトロンとコレ(紋章)どっちやる?」と問われ、「耳の尖ったキャラの話は一度はやらねばならん」というトレッカー振りを発揮して制作参加を決めたそうです。現在の制作進行状況は脚本はほぼ終わり、メカ設定などが終われば一気に突き進めるとのことで、これは8月末の話なので、現在はもっと進んでいるかもしれません。

<こだわりの人・長岡監督>

監督は長岡康史さん(近作:ゲーム『この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO』<キャラクターデザイン>、『魔法騎士レイアース』<演出>、『新・キューティーハニー』<演出>)が起用されましたが、この理由について岩田さんは、「面白い画面を作るし、最近テレビをやっていなかった事、何より原作を気に入ってくれたので」という事でした。

かなり『こだわり』のある監督らしく、バリバリのストロングスタイルの作品を作りたい、とおっしゃっているそうで、アニメ化のネックといわれていたアーヴ語も、当初は全編通して使う、という話だったそうですが、さすがにそれは無理だということで断念したそうです。

平面宇宙の戦闘では普通のSFアニメの艦隊戦ような画面構成ではウソになる、ということで、『収集された情報から再構成されたバーチャルなもの』(稲荷さん)、というイメージで描かれるそうです。とりあえずは潜水艦の戦闘をイメージしてほしい、とのことです。

で、このようなSF的なことばかり言っているのかといえばさにあらず、『アルプスの少女ハイジ』の様な人間ドラマも描きたい(すごい例えだな)とのことで、シナリオも2稿3稿当たり前、7稿までいったものもあるそうで、監督の力の入れようがわかります。赤井さんもサンライズがこれほど妥協の無い仕事をしていることに驚いたそうです。

<現場の苦労・修正修正また修正>

今回のアニメでは13回(1クール)で『紋章』全3巻を映像化するため、何人も脚本家を配するとシリーズ終了までに各々がスタイルを掴めずに終わってしまうため、数人でローテーションを組むことができず、かなり大変だということです。7稿までいけばそれは大変でしょう。もっともこれを聞いて最近短期決戦型のアニメが増えている背景はこのあたりにもあるのかな、とも感じました。

<ありがとう海部さん、ありがとうWOWOW>

『紋章』がWOWOWで放送される経緯について、会場にきていたWOWOW海部プロデューサーによると、最初は現在放送している『ブレンパワード』の後番組として、タイトルが伏せられたままで「原作ものなんですけど」とサンライズから持ち込まれたそうです。

以前から『星界』ファンであったという海部さんはもしや、と思ったそうで、「星界でしょ?」と聞きたいのを押さえるのが大変だったそうです。「原作はなんですか」と聞いてもはぐらかされるばかり。

そして正式に『星界の紋章』と聞いた時の喜びは、決まりかけていた企画も後回し、一週間ぐらいのスピード決着で放映を決定するほどだったそうです。

よく有料衛星放送で放送されることについて不満の声を耳にします。しかしこうした熱意あるプロデューサーがいるところで、必要以上にスポンサーに気を使わずに放送ができる、という点では今回『紋章』は非常に幸福な道を歩んでいるのではないか、とも思います。

<スタア誕生?フィアは誰だ>

注目のキャストは最初6月頃行われたオーディションでジント役は「意外な人」(森岡先生)の起用が決まったものの、ラフィールは未決。

実は森岡先生のイメージにぴったりの声の役者さんがいらっしゃったそうなんですが、技術的に『かなり』未熟なために、アフレコ期間中に鍛え上げることも難しいだろう、ということで断念。

9月頭には再オーディションが行われたそうなので、誰がフィアを担当するか、楽しみに待ちましょう。赤井先生あたりからは"意外な人"発言を受けて「ジントは玄田哲章」大森先生が「じゃぁラフィールは野沢雅子」などといったアヤシイ発言も出ておりました。

<頑張れ服部克久先生(いろんな意味で)>

音楽は服部克広さんがすべて担当することになっており、当日はオープニング曲のロングバージョンが初公開、ティンパニなどパーカッション類を多用したシンフォニックないかにも重厚なSF映画風。

赤井先生は「オレこういうの弱いんだよ、なんとなく惑星大戦争みたいだけど(笑)」。エンディングはボーカル曲の予定だそうですが、詳細は未定。赤井先生はさだまさしに防人の歌をうたってもらいたいそうです……。

<冬の星界文庫祭り!>

今回のアニメ化に際し、出版元であるハヤカワ書房では『SFマガジン』12月25日号にて特集と(先生の原稿が間に合えば)短編を掲載、さらに12月頃をめどにオフィシャルハンドブック、来年2月には「星界の紋章」読本(形式は不明)を出すという大盤振る舞い。

もっともハヤカワの込山さんはすべて先生の森岡原稿の進展次第、という恐怖のセリフ。壇上の先生も、SFMの原稿忘れていたという編集者泣かせの解答…。

ハヤカワ書房もダーティペア以来(?)のアニメ化ということで、とんでもなく力を入れているようです。

<大団円?星界シリーズの明日はどっちだ>

締めくくりは森岡先生の今後の予定。大森先生の「早く『戦旗』III出して完結させてよ」とのツッコミに、「よく誤解されるんですが、『戦旗』は3で終わるんじゃないんですよ、あくまでディアーホ3部作と謳ってるだけで、戦争続く限り『戦旗』です」(そうなのか初めて聞いた。)

重ねて森岡先生、「だって二文字で『星界の〜』にぴったりくる言葉探すの面倒なんだもん(笑)」(そうかそれが本音なのね。)

現在の執筆予定は、角川書店から『月と炎の戦記』なる長編が出るそうです。これは日本神話をモチーフとした内容の作品だそうです。

その次が『戦旗』3巻となるそう。森岡先生曰く「俺今世紀中は仕事いっぱいなんだよってなんかカッコイイな(笑)」大森先生対へて曰く、「そんなにかけずにさっさと出しましょうよ、来年の夏くらいに」森岡先生また曰く、「さっさと出せても私の場合はは来年になるんですか(苦笑)」…などとオチがついたところで終了となりました。

<戦藻録・または私はいかに心配するのをやめて星界アニメに期待するようになったか

今回の企画はアニメ化スタッフの中枢部そのものが参加してくださったおかげで、非常に内容が濃く、有意義かつマニアックなものでした。現在の作業状況や赤井先生の暗躍といった話が聞けたり(声のキャスティングが聞けなかったのは残念)、アニメ化にまつわる苦労談などといった舞台裏の一部も垣間見ることができました。

またパネリストと参加者の距離が近いというのは『SF大会』内の企画ならではで、対談終了後に参加者が先生方にサインを求めて列をなす、という光景も見られました。僕自身はこういうイベントの参加自体も初めてならば、企画スタッフをやる、という経験も初めてだったのですが、楽しくお手伝いさせていただきました。こうした機会がまたあるとすれば『身上をつぶさない程度』(笑)にお手伝いしていきたいと思います。

(文責・米内成美)


追伸:来年は7月3日〜4日、長野小谷村において、第38回SF大会『やねこん』が開かれます。みんなで参加して何かわるだくみをして遊びましょう!